まずは隣人、次に名司会、最後にアイデアマン
「お友達と仲良く遊べず、喧嘩に発展してしまうことも多いんです。そばにいる親としてどう関わればいいのでしょうか」
先日上記のようなご質問を5歳の男の子のお母さまからお受けしました。これは親なら誰しも一度は経験したことのある迷い、疑問ではないでしょうか。
私がおススメする方法は、“喧嘩のときの3step”です。
- まずは隣人となれ
- 次に名司会となれ
- 最後にアイデアマンとなれ
親が指示、解決せずに子ども同士で着地点を見つけさせる
1)隣人になる
ここで言う隣人とは、口を挟まず、関わらず、ただ傍観しているだけの第三者のことを指します。つまり、危なくないようならば一切の介入をせずに子どもの動向を観察しておくだけにとどめておくのです。喧嘩は問題解決能力と相手への共感力を育てる絶好のチャンスでもあります。ここで当人同士で丸く収まる解決法を見つけられたらベストですね。
2)名司会者になる
当人同士の話し合いが膠着状態になっているようであれば、周りの大人が名司会者となってサポートしてあげましょう。つまり、「Aちゃんはこう言ってるよ」「Bくんはこう思ってるみたいよ」「二人の意見が合わないけどどうする?」と交通整理を手伝ってあげるのです。言い合いの結果、論点が自分たちでも分からなくなりがちな子どもたちの喧嘩。冷静で客観的な司会者の存在が有効に働くケースも多いことでしょう。
3)アイデアマンになる
それでも尚停滞しているようなら、ここで経験豊富な大人がアイデアマンとなってあげましょう。いろんな解決案を提示し、どの案を採択するか本人たちに考えてもらうのです。重要なのは、あくまでも複数の策を提案すること。一つでは大人からの一方的な指示、命令になってしまいます。いくつもあるアイデアの中から当人たちに選ばせ、着地点を決定させることがポイントです。
保育園リトミックでのもめごとはお尻ぴったんこで仲直り
私はある保育園の外部講師として、月に数回リトミック指導に伺っています。レッスンの最中に子どもたちの喧嘩が起こることも少なくありません。
先日もピアノに合わせて歩く活動中に、数人の女の子たちが手を繋いで歩きだし、その仲間からはじき出されてしまったMちゃんが怒って抗議するという構図の喧嘩が怒りました。「私も手を繋いで一緒に歩きたいのに!」と主張するMちゃんと、「これ以上人数が増えたら幅が大きくなって歩きにくいの」という3人グループ。
しばらく黙ってその様子を見守っていた保育士さんがおもむろに立ち上がって、本人たちの話し合いに加わりました。「確かに、たくさんで横に繋がって歩いていたら危ないかもしれないよね。でもMちゃんはみんなと仲良くくっついて歩きたかったみたいよ。どうしようか?」
それぞれの言い分を認めてもらい、意見のずれを客観的に分析してもらって一旦クールダウンした子どもたちは首をひねって考えます。でも話し合いは堂々巡り。
すると保育士さんがまたひと声。「二人ずつならどう?それなら危なくないし、Mちゃんもお友達と歩けるよね。それか、ひとりずつ歩いて、あすみ先生に合図のピアノ弾いてもらったら一瞬だけ全員で手を繋いで丸くなってみる?それか…手じゃなくてMちゃんお尻ぴったんこで誰かにくっついちゃう?」
子どもたちが声を立てて笑いました。「お尻くっついちゃうの?変だよー」と言いながら全員があっという間に笑顔になったのです。「じゃそれにしよう!先生、Mちゃんのお尻にボンド塗って。だれのお尻にくっついちゃうかドキドキしちゃう!」一人が言うとMちゃんも「ボンドボンド!」といって先生にせがみます。
そのあとは、ピタッ!と音楽が止まるたびにMちゃんが誰かのお尻にくっついてしまうという楽しいリトミックになり、そうしていつの間にかクラス全員のお尻に架空のボンドがべったりと塗りこまれ、ピアノが止まるときゃーきゃー言いながら誰かとお尻をくっつけるという斬新な一日になりました。
間違いなく、これまでで一番、
全員がピアノの音に集中して耳をそばだてた一日でした笑
子どもに委ね、大人は取りまとめと複数案の提示でサポート
子どもの喧嘩は本人同士で解決させるのが一番。最初は喧々諤々とやり合っていても、自分たちで解決できたならしこりは残らないのです。むしろ上記の例のように、結果的に楽しく発展することすらあります。最も避けたいのが、大人が一方的に介入し喧嘩をやめさせてしまうこと。問題解決能力、共感力、コミュニケーション能力を育てるせっかくの機会。ぜひ、喧嘩のときは3stepを思い出してみて下さいね。