「もうやらない」「じゃあ行かない」「しらない」「もういい」…。
自分の思うようにいかない時ときや困ったことが起きたとき、子どもがこんな言葉を言うのを聞くと、もう少し粘ってくれないかな…と感じることはありませんか。
キャンプディレクターとして、そんなときに心がけていることをお伝えします。
「おもしろい!」と思った時の子どもの吸収力のすごさを活用する
子どもに粘り強くやり抜く力をつけたいなと感じるなら、まず好きなものに没頭する瞬間を大切にしてみましょう。“好き”の扉は次の世界の扉を開き、知的好奇心を満たすための集中力や粘り強さを養います。
子どもが「おもしろーい」と、水たまりにしゃがんで風にゆれる波紋を眺めたり、時間や雲の流れで変わる色や光の変化を観察していたりする時ときに、つい「もう、行くよ!」とすぐ声をかけてしまいたくなるかもしれません。また、同じ絵本や図鑑を何度も何度も見ている姿に、好みの偏りができるのではと不安を感じるかもしれません。
実はそんな時ときこそ、子どもの内なる力がぐんぐん成長するチャンス。できれば時間の許す限り見守ってみてください。その瞬間の集中力と吸収力には目を見張るものがあることに気づくと思います。
例えば、電車が好きな子が車両の名前を全部覚えてしまうなんてことをよく耳にすると思います。我が家でも、4歳児が「お母さん、ハビタブルゾーンがね…」と宇宙の話をしてきた時にはびっくりして自分の耳を疑ったことがあります。
“好き”の力を借りて、しっかりと見守り、少しずつ粘り強くやり抜く力を育てましょう。
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夢中になれることこそがステップアップの原動力
大人でも子どもでも、人から一方的に教えられたり与えられたりしたものよりも、興味を持って夢中になれるものがあると、自分で追求しようと努力する力が生まれます。興味を持って調べたり体験したりすることで、身につく知識や技術の深さも達成感も自然と大きくなります。
あるキャンプで出会った子は今まで出会った誰よりも焚き火に魅了された子でした。
最初は燃えている火に薪を足していくことから始まりましたが、最初からやってみたい!と着火にチャレンジし始めました。何度か一緒に過ごすうちに、その子が壁にぶつかりました。晴れた日には上手くできていた着火が、雨天や湿気の多い日には思うようにいかない。
ああ、困っているな、考えているな、と思いながら手を出さずに見守っていると、その子はそれをどうすれば上手くできるのか、木の種類は?太さは?薪の組み方は?と1つずつ工夫したり、研究してみたり、人に聞いたりしながら頑張っていきました。
気が付くとその子はいつの間にか、少雨の中でも着火できるスキルを手に入れていました。何度も一緒にキャンプを過ごしてその子が火をつける様子を見ていた私は、その頑張りに驚いたものです。“好き”の気持ちがあると、その時できないことがあっても、諦めず乗り越えたいと思うようになるのだなと感じた体験でした。
できる事が1つ増えるたびにおもしろく感じ、1つ知るたび次のステップへチャレンジする。そのことがその子をどんどん成長させてくれたのです。好きなことだからこそ、失敗や困難に対してストレスが小さく、粘り強く取り組めた結果でもあります。
これが自信になり、その子はいろんなことに粘り強く取り組めるようになっていきました。まさに“好き”を原動力に新たな力を手に入れたのです。
頑張るためのロールモデルは身近にあるといい
ロールモデルとは、具体的に真似できたり無意識にお手本にしていたりする人のことです。目の前に同じような“好き”を持っていて、困難を乗り越えている人を見ると、自分にもできるかもしれないと踏ん張れることがあります。
兄弟姉妹でアスリートの家族によく見られるように、ロールモデルが身近にいればいるほど自分を顧みることができ、より成長への近道が見えやすくなります。頑張る道筋がつけやすいので、もうひと踏ん張り!と乗り越えていく力が育ちやすいのです。
また、このロールモデルは複数いるとよいとされています。子どもが成長するときにどの道筋を選べばよいかの選択肢を広げてくれるからです。それがあると、自ら選択肢を多く出して、その中から最適なものを選び取っていく強さと冷静さを持ち合わせることができます。
子どもによっては選択肢をなかなか見出しにくいタイプもいます。日頃から親がロールモデルになって様々な乗り越え方を模索し、一緒に考えていけるとすぐに諦めない力が少しずつ育ちます。
好きから始まる集中力がやり抜く力を育てる
わが家では息子の“電車好き”を使って連休にライドアドベンチャーを企画しました。息子が生まれて初めて自分で時刻表を見ながら、駅スタンプ集めと課題を解いて進んでいく旅です。
泣いたり困ったりしながらも、好きな特急に乗るためにはどうしたらいいか、課題をクリアするためにどんな方法があるか模索しながらのチャレンジでした。乗り遅れそうになったり忘れ物をしたり、迷子になったりしましたが、集中して課題と向き合っている時には声をかけず、夢中で電車を見ている時はそっとしていました。
普段にはなかなか見られない粘り強さを垣間見ることのできた時間でした。
あなたの子どもが集中している時はどんなときですか?そんなときはどうしていますか?きっと集中しているときは“好き”の気持ちが膨らんでいるときではないでしょうか?
子どもの“好き”が育ててくれる集中力は、やがて困難を乗り越える力を育ててくれます。好きだからこそできた粘り強さは、成長するにつれ、ここぞという時の強さとして活きてきます。どこから始めようかと思ったら、まず“好き”を見守ることから始めてみませんか?