入園入学のタイミングでのお母さんの心配事としてよくあがるもののひとつが給食です。「うちの子偏食なんだけど…」「少食だから食べ切れるとかどうか…」など、給食が気になるお母さんは多いものです。
保育士25年の私が、経験からの取り組みとお母さんにお願いしたいことをお伝えします。
入園・入学はお母さんも不安。偏食気味な子の給食は焦る必要なし
入園前の面談で、お母さんから「給食をちゃんとは食べられるか心配です」「うちの子偏食もあるし、マナーも身につきません。私の関わり方に、何か問題でもあるのでしょうか?」など、給食への不安のご相談がとっても多いです。
でも安心してください。私が25年間、幼稚園・保育園へ勤務を継続してきて今日まで、全く給食を食べなかったというお子さんは一人もいません。「うちではガンとして梅干しと駄菓子しか食べません」とお母さんが言っていた子どもでも、お友だちの真似をしてすんなりと初日の給食を食べることができたりということもあります。
お母さんからは「え〜!!先生!どんな方法を使ったんですか?」とびっくりされるのですが、私は特別なことは何もしていません。子ども自身が楽しそうに食べるお友だちの真似をしただけなのです。
給食は完食にこだわらない。「全部食べる」より「楽しく食べる」に重点を
園では「頑張って全部食べる!」ということよりも、みんなで食べることを楽しむことを目標にしています。「食べないと大きくならないよ!」とか、「早く食べないと遊ぶ時間なくなるよ!」など、急かしたりはしませんし、マイナスな言葉もかけません。頑張って全部食べさせることに一生懸命になるよりも、みんなで食べることの楽しさを覚えたほうが、最終的には完食にも近づくことも多いです。
私自身、幼少期はお弁当の時間が苦痛でした。嫌いな物はあまりなかったのですが、食が細かったのです。親の心配は感じていましたが、食の細い私にとっては全部食べるということがとても大きなストレスだったのです。
どのお母さんも子どもの健康のために、食事に気をつかい工夫もされていることと思います。お母さんから見て「長い時間かかってたったこれだけ?」「好きなものしか食べない!」と感じても、焦る必要はありません。子どもが自分で決めた分量を、好きなだけ食べられたことを一緒に喜んであげましょう。
マナーを覚えるより大事なこと。「食事って楽しい」と実感すること
毎日「僕、給食いらない」と言いながら遊び続けるウーくんという男の子を受け持ったときのこと。何か少しでも食べてもらおうと食事の机の方に誘い出すのですが、なかなか時間がかかります。毎日「今日のお肉美味しそうだよ」「フルーツがあるよ」と誘ってみますが「僕、お肉嫌い」「僕フルーツ食べない」と嫌いなものが多く、なかなか誘いにのってくれません。
ところがある日、ちょっとしたきっかけで、ウーくんが進んで席についてくれたのです。
1人の子がロールパンをちぎってお皿にてんこもりに盛りつけはじめました。まるで小鳥のえさ?と思うほど、細かく細かくちぎって高く盛りつけてあります。それを見ていたとなりの子が真似をして、次は向かい側の子。だんだんと広がってみんなでちぎり始めました。ウーくんも楽しそうにその輪に加わり、まるでスナック菓子をつまむようにみんなとお話しながら食べ始めたのです!
この日、みんなでロールパンを粉々にちぎって、ワイワイにぎやかに皆で食事をしました。この日の様子は決してお行儀が良いとは言えませんが、みんなで食卓を囲む楽しさは感じてもらえたはずです。マナーを厳しく教えるより、偏食や少食の子どもはまず先に「楽しく食べる」という小さな目標を達成できるように工夫してみましょう。
お友だちからの刺激や周りの環境に影響されやすいように、大人があえて黙って観察するのも良い方法だな〜と思いました。
今回は時間がなく保育者が掃除しましたが、3歳児クラス19名でロールパンちぎりの給食後は、お掃除が大変でしたけどね(笑)
園と家で態度が違ってOK。バランスを取りながらできるようになっていく
園で頑張っている子どもはお家でしっかり甘えんぼうさんだったり、おうちで甘えんぼう全快のお子さんは園ではしっかり頑張っていたり、うま〜くバランスをとっています。それが子どもの持つ社会性なんですね。
どんな環境であっても、子どもも大人も、無理のない程度に向き合っていきましょう。園と同じことをご家庭でやったからといってうまくいくとは限らないし、その逆もしかりです。できたりできなかったりを繰り返しながら、少しずつできるようになっていきます。
先生との信頼関係ができてお友達の様子に刺激されながら、苦手なものや分量も「食べられた!」という目に見える成果を感じさせてあげましょう。その積み重ねで、お食事が楽しい時間になり、卒園するまでには完食できるようになります。
お母さんは焦らず気長に、子どもと一緒に食事を楽しんでくださいね。
- 「全部食べる」より「楽しく食べる」を大事にする。無理強いはしない
- お母さんやお友達が食事を楽しむ様子を見せる
- 「食べさせなければ」と焦らず、気長に構えて少しずつ取り組む