形容詞をふんだんに使った日常会話が、自分の気持ちを説明できる子を育てます
子どもにも大人同様、様々な感情があります。例えばいい気持ちの中には“楽しい・嬉しい・面白い・気持ちがいい・誇らしい・待ち遠しい”などといった色々なニュアンスのものがありますね。例えば心がモヤモヤする気持ちの中にも同様に、“悔しい・腹立たしい・歯がゆい・悲しい・切ない”などといった色々なものがあります。
これらの微妙な温度差のある感情を言葉に当てはめることはとても高度なこと。子どもにとって一夜にして身につくような容易な技ではありません。
だからこそ、ぜひ日常生活の親子の会話で意識して使うことをお薦めするのが、形容詞なのです。様々な形容詞をインプットする経験の積み重ねが、自分の思いを言葉で表現できる子を育てます。
言葉で説明できないから癇癪がヒートアップする!
子どもが強く自己主張することを通り越して癇癪にまで発展しまうことが増えるイヤイヤ期。成長の一過程だと分かってはいても、親にとって手こずることの増える時期でもありますね。
実はこのイヤイヤ期の癇癪は、自分自身の気持ちを言葉で周りに説明できなくてヒートアップしていることが多いのです。形あるものを指す名詞とは違って、目で見えない自分の気持ちを言葉でアウトプットするのはとても難しい。それが思うようにできないもどかしさが、癇癪となっていることが多いのです。
つまり、的確に気持ちをまわりに伝えることができるようになるために、イヤイヤ期には、形容詞の貯金が有効だということなんです。
絶対に青がいい!3歳男の子の訴えがクールダウンしたある日のできごと
私はリトミック講師として定期的にある保育園に指導に伺っているのですが、自立心が芽生え、自己主張が強くなる3歳前後によく起こるのが、教具の色へのこだわりです。ピンクがいい、プリンセスの紫がいい、トーマスの青がいい…など、ハンドベルやフープ、スカーフといった教具を使う活動ではたびたび色の取りあいが起こります。
その日も3歳のAくんは青のフープがいいと言って譲りませんでした。残っているフープは黄色と白のみ。よそ見をしていて私の声を聞きのがし、順番に並びそびれてしまったのです。青を先に持っていかれたことが納得いかず、たちまちAくんは真っ赤になって怒り出しました。すっかりリトミックどころではなくなってしまったAくんに、口々にみんなが「だって順番なんだよ!」と応戦します。
クラス中が騒がしくなってしまった中で、私はAくんに「悔しかったのかな?」と声をかけました。「それとも、悲しい気持ちになっちゃった?がっかりしちゃったのかな?」と彼の背中をゆっくりさすりました。興奮がなかなか収まらなかったAくんが声を落としてぼそりと「全部」と呟きました。「悔しいし悲しかった。青が欲しかった」と。そうだったんだね、悔しくて、悲しかったんだね、と私が繰り返す言葉に、Aくんはしょんぼりした顔でコクンと頷きました。
しんと静まった教室。すると次の瞬間、Aくんの周りに、お友達から次々と差し出された青のフープが。先に青を選んだ子たちが譲ってあげようと集まってきてくれたのです。涙がたちまち乾いて笑顔になったAくん。びっくりしたような、照れたようなその目を覗きこんで「嬉しいね。みんな優しいねえ」と私が声をかけると、クラス中みんなが笑顔になりました。
自分の気持ちを言葉にでき、周りに共感してもらえること。
これは大人も子どもも関係なく、人間なら誰しも嬉しいことですよね。
目に見えない形容詞は親子で共感して、都度貯金!イヤイヤ期の攻略法
自分の気持ちを言葉で表現できることはつまり、まわりに理解、共感してもらえる糸口を自分で提示できること。自分でどうにかしたいのにうまくいかず、その気持ちもわかってもらえないイヤイヤ期の子どもの癇癪は、形容詞を日々貯金することで大きく軽減できます。特に形容詞は目に見えない類のものだからこそ、日常で感じた気持ちを都度そばにいるママやパパが共有して、言葉を当てはめてあげましょう。今自分が感じている気持ちはこういう言葉で表現できるものなんだと知る経験を重ねることは、コミュニケーション能力を底上げすることにも繋がります。
何より、自分の気持ちを表現できれば本人のストレスも減りますね。
親子ともに、イヤイヤ期をハッピーに乗りこえられるためのヒントになりますように。