日本には「うそつきは泥棒の始まり」という諺があるように、うそだけは絶対に許してはいけない、という価値観があるように思いませんか?実は世界にはうそをついても叱られない国があるのです。
これだけは許せない!子どもがうそをついたとき
4歳、5歳くらいの子どもは、ちょっとしたことでうそをつくことがあります。歯磨きをまだしていないのに「もうした」と言ったり、口にチョコレートをつけながら「食べていない」と言ったり。
これらのうそは「これがバレたら怒られるに違いないぞ!」と、先読みする力が備わった証拠でもあります。だからうそをついたことよりも、歯磨きが必要なこと、内緒で食べてはいけないことを伝えることが大切です。
しかし、私たち母親は、子どもの小さなうそにもショックを受けます。それは内容はどうであれ「人としてやってはいけないこと」を犯したような気持ちになるからかもしれません。
そのためうそに過剰に反応してしまい、このままうそつきな大人になったら大変!との思いから、キツく叱ってしまうこともあるでしょう。
今回はそんな子どものうそとの接し方について考えていきたいと思います。
インド人はうそつき?価値観の違い
世界にはいろんな国があり、その数だけ文化があります。日本ではうそはいけないことだと、私たち大人も小さいときから教えられているし、自分の子どもにもそう伝えている人は多いでしょう。昔話を見ても、うそをついたら大変なことになった、という教訓が含まれている話が多くあります。
しかし、うそが悪いことではないとされている国があります。それはインドです。(もちろん一人ひとりの個性はありますが、ここでは文化としてお話しさせていただきますね)
インドで道を尋ねるとき、3人に尋ねると3人とも違う方向を指すことがあるそうです。そのためインド人と関わった日本人は「インド人は嘘つきだ!」と感じるといいます。それも仕方ありません。日本では、もし尋ねられた行き先を知らなかった場合は「すみません、わかりません」と正直に伝えるのが良いとされていますから。
しかしインドでは「困っている人を助けるという行為」そのものが尊いとされています。「知りません」と突き放すことが悪なので、間違っていてもとりあえず「あっちだよ」と教えることが正しいのです。そう、インド人はうそをついているのではなく、正しいと信じている行動をしたに過ぎないのです。
このような背景を知っていれば、3人に違う方向を指されたとしても「嘘つきだ!」と怒る気持ちは少しマシになるでしょう。インド在住歴が長い方の話では、「道に迷ったら8人に聞いて、一番多い方向へ進む」のがいいようです。
子どもがうそをついたときの叱り方
さて、ここで子育てに視点を戻しましょう。最近お子さんがついたうそを思い出してみてください。そして、そのうそをついてしまった、もしくはつかざるを得なかった子どもの気持ちを想像してみましょう。
冒頭で例に挙げてた歯磨きやチョコレートの例は、怒られたくないというのが理由でしょう。
この場合「これを言ったら怒られるな」という未来が予想できているから、それを回避しようとしています。これは脳が発達して、時間の感覚や記憶の定着がないとつけないうそですから「もうそんなことがわかるようになったのね」とまずは成長を認めましょう。
ここで強く叱りつけると、どんどんとうそを重ねかねません。
お見通しではあるものの、子どもの言葉を信じているよという気持ちを込めて「そうなんだね。虫歯にならないといいね」とサラッと流すのも一つです。だって本人はすでに悪いことをしてると気がついているわけですから。
では次に、弟を叩いたのに「叩いてない」と言った場合について考えてみましょう。
子どもはお母さんに隠れて叩いたつもりでも、お母さんは叩いたところがしっかり見えていたとすると、「うそついてるでしょ!」と叩いたこと以上にそれを隠してごまかそうとしたことに注目して叱ってしまうことがよくあります。これは日本から昔から伝わる「うそはいけない」という価値観のせいでしょう。
しかし、本当に叱るべきポイントは「弟を叩いたこと」です。さらにいうと、思わず手が出るほどの辛い思いをそれ以前にしているのかもしれません。
そんなことに想いを馳せる暇もなく「うそ」という大きなマイナス点に視界を覆われ、うそをついた子どもの気持ちを考える余裕がなくなってしまうことが多いのです。
子育てに悩んだら、視野を広げてみよう
私にも経験があります。そんなお母さんはきっと多いはず。でもそれは仕方がないことなのです。これまで私たち日本人が長い歴史の中で培ってきた価値観です。
日本は島国で、他の民族との交流もほぼありませんでした。いつものメンバーで狭い土地で暮らしていかなければいけません。そんな環境で争いを避け、上手くやっていくコツとして、うそをつかないことが重要視されてきたという背景があるのです。
インドの例のように、今は世界中の価値観に触れられる時代です。子どものうそに過剰反応しているな、と気がついたら、ぜひこのインド人の価値観を思い出してください。そして落ち着いて叱るべきポイントはどこなのか、本当に叱る必要があることなのかを改めて考えてみることを習慣にしましょう。そうすることで子どものうその奥にある「ママを困らせたくない」「大好きなママに嫌われたくない」という心の声が聞こえてくるかもしれませんね。
私が住んでいるブラジルは、秋から冬に向かって寒くなってきました。海外在住者ならではの視点から、読むだけで心が緩むような子育てに役立つ情報を提供できたらと思っています。