イヤイヤ期がなかったら、将来に悪影響がある?
2歳ごろに訪れると言われるイヤイヤ期、英語圏ではterrible2(テリブル2=ひどい2歳児)と言われています。他の国でもそれぞれの言語で名前がついているほど、2歳児を育てる大変さは世界共通のようです。SNSでは毎日のようにイヤイヤ期の大変さを物語った写真やエピソードが流れてきます。
そんな中、子どもが2歳を迎えたけれど大してイヤイヤしなかったり、2歳の頃を振り返ってもそんなに大変だった記憶がなかったりするご家庭も少なからずあります。その場合、あまりに世間がイヤイヤ期の情報で溢れているため「うちの子、イヤイヤ期ないけど大丈夫かな?」と心配になることも。
そこで今日は、イヤイヤ期の仕組みについて考察してみましょう。イヤイヤ期が一体なんなのか、その仕組みがわかれば「うちの子イヤイヤ期がない」という心配も、「イヤイヤ期がないなんて羨ましい。いつになったら終わるの?」というお悩みも、どちらも解決の手がかりが見つかるかもしれません。
イヤイヤ期は、言いたいことをうまく伝えられない時期のこと
イヤイヤ期のイメージは、何を言っても「イヤ!」と言って、お着替えもおむつ替えもお散歩もご飯も全部拒否されて心が折れる…という感じでしょうか。この意味不明な主張(失礼!)にも実は理由があります。
中でも大きな部分を占める2つの理由について解説します。
ひとつめは、記憶力が急成長する時期だということ。人生で初めて「覚えている」という状況を経験します。そのため、記憶にある景色と今目の前にある景色が違った時に「前と違う!!同じがいい!」となるのです。それが大人から見ると「こだわり」や「癇癪」に見えるのです。
ふたつめは、要求を言語化できないということ。「前に赤い服でお出かけしたから今日も赤い服が着たい」と説明してくれればことは済むのですが、2歳ですからそうはいきません。自分の主張を言語化するには、まだまだ語彙が足りないのです。そのため全ての主張を「イヤ!」の一言で表現することになります。
英語の苦手な人が、急に外国人に話しかけられて思わず「No〜!No〜!」と言ってしまうのと状況は似ています。限られた知っている言葉だけで伝えるしかないため、黄色い服を「イヤ!」と振り払うことになるのです。
赤い服が着たいときも「イヤ!」もっと遊びたいときも「イヤ!」背中が痒いときも「イヤ!」
それが”イヤイヤ期”の由来でしょうね。ちなみにハンガリーでもNo の意味のNem!を連発している子どもをよく見かけました。
言葉の発達が早かったり、ベビーサインで伝えることに慣れていると、主張したい内容が早くわかることがあります。すると問題がすぐに解決できるためぐずる時間が短くて済む。その結果、親にとっては「イヤイヤ期がなかった」と感じるケースになります。
言葉の発達が早いと、イヤイヤ期が来ないこともある
キッズコーチング®︎では、2歳のイヤイヤ期が楽になる助けの一つとして、0歳の頃から形容詞を使って言葉がけをすることをお勧めしています。
物の様子や感情を表す言葉を知ることで、発話し始めた頃の語彙が増え、主張がわかりやすくなるのです。
わが家の場合、0歳から形容詞を意識して言葉がけをしていた下の子は、上の子に比べてイヤイヤ期の苦労はほとんどありませんでした。もちろん持って生まれた気質の違いはあるものの、それだけではありません。
二語文が出るようになった頃、親の顔を見て「おもちゃない、かなちいの」と言ってきたときは、思わず新しいおもちゃを買い与えてしまいました。何が欲しいか明確なので、ぐずる前に問題を解決できると癇癪も減ります。
これがおもちゃ売り場で「イヤー!」と泣かれていたら、きっとイヤイヤ期の辛い思い出になったと思います。
息子の場合は舌ったらずなせいで、5歳の今でも「サ行」が「タ行」に聴こえるため、時々何を言っているのか理解できないことがあります。そんな時は焦れて、大爆発しています。言いたいことが伝わらないって相当なストレスなんですよね。
イヤイヤ期と反抗期は理由も対策も全く別物(H2:30文字前後)
子どものイヤイヤ期が無いことを心配する人の中には、イヤイヤ期と思春期以降に迎える反抗期を混同してしまっているからかもしれません。私も発達を学ぶまでは同じような物だと思っていました。
反抗期については私自身まだ経験もなく、専門的に学んだわけでもないので多くは語れません。しかしあちこちで「反抗期がなかった子は親が押さえつけすぎている」とか「大人になって爆発する」のような怖い情報をよく耳にしますから、イヤイヤ期がない場合も同じような悪影響があるのではと不安になる気持ちはよくわかります。
しかし反抗期とイヤイヤ期は別物です。イヤイヤ期は脳の発達に伴って上記のような理由で起こる仕組みを知りました。だから、コミュニケーションがうまくいったり、大人の側がただの癇癪と片付けずに「何か主張したいことがあるに違いない」というスタンスで子どもを観察することで、イヤイヤ期が目立たないことは十分にあり得ます。
イヤイヤ期がなくて心配、という保護者の方は、お子さんのことをよく観察して癇癪を起こす前に解決策を提示できているのかもしれません。今のご自身の子育てに自信を持ってください。
とはいえ、イヤイヤ期で困っている保護者の方がよく見ていないということでは決してありません!持って生まれた気質によっても大きく違ってきます。その場合は気質に合わせた接し方をすることによって、癇癪の時間が短くなったり、癇癪を起こす前に伝えられるようになったりすることもあります。他の記事で紹介されている内容も参考にされてくださいね。