学校教育でも重視されるようになってきた”非認知能力”について、今回から不定期で全7回にわたってお伝えしたいと思います。今回は日々の子育てで直面することの多い「我慢する心」についてです。
非認知能力という言葉を聞いたことはありますか?近年注目されている、子どもが身につけると良いとされる力の内、テストで点数化できない力のことです。具体的には思いやりや自分で考える力、忍耐力などが含まれます。
反対にテストで点数をつけて理解度を確認できる計算する力や国語力などを認知能力と呼びます。
認知能力と非認知能力は相反する物ですが、どちらも生きていく上で必要な力です。昔から知られていた認知能力については、指導法や評価基準が確立しています。しかし最近重要さが理解され始めた非認知能力については、どうやって身につけさせるかという具体的な方法が一般的になっていません。
今回から全7回のシリーズで、非認知能力についてお伝えしたいと思います。第1回は“我慢する力”です。
生活のあらゆるシーンで「待つ」が必要
”我慢する力”を育むためにはどんな取り組みが有効でしょうか?
「おやつは3時になったらね」
「おもちゃは次のお誕生日に買おうね」
「電車の中では静かにしてね」
「今お皿洗ってるから後でね」
このような言葉を、子どもが一度で聞き入れくれたとしたら、日々の子育ては一体どれだけ楽になるでしょう。子どもに我慢をしてほしい場面は日常の至ることろにあります。我慢の時間も様々ですが、これらに共通していることは「待つ」ということ。そうです。”我慢する心”の土台は待つことなのです。
”我慢する心”を育むためには、5秒待つことから始めましょう。
我慢を教えるのは、頭の中に時計ができたころが最適
キッズコーチング®︎では、0歳から6歳までの発達について1年で一つずつ身につけていく力があると考えています(個人差あり)。その中で”我慢する心”は4歳くらいで育つと言われています。その理由は脳の発達と関係があります。
4歳ごろに、時間の経過が理解できるようになるのです。食べたいおやつを前にして「後でね」と言われて我慢できるようになるのは、「いま」と「後で」がわかるようになった4歳ごろからです。時間の感覚が育っていない場合、今が全ての世界で生きています。今食べたいおやつを「後でね」と言われると、もうそのお菓子は二度と食べられないと感じてしまい、なんとしても今食べたい!と主張します。大人はその姿を”我慢ができていない”と捉えているのです。
時間の経過が理解できるようになってきたら、まずは5秒から”待つ”ことを始めてみましょう。
5秒待つことができたら、その次の時には10秒、30秒と伸ばしていきましょう。
「後でね」の約束を守り続けることで、待てる時間が伸ばせる
ここで、絶対に守ってほしい鉄の掟があります。それは「後でね」と言った内容を親が必ず実行することです。
例えばお母さんが通話中に子どもが「抱っこ」と言ってきた場合、通話が終わったら必ず抱っこをするということ。通話が終わったときに子どもが別の遊びを始めていたとしても、必ず抱っこをします。それを繰り返していくと、我慢した後には嬉しいことがあることを学びます。それは将来、困難なことに立ち向かう努力をする力になります。
先日うちの5歳の息子がお菓子を買ってほしいと言いました。その日はたまたま頂き物のケーキが家にあったため「いいよ。今日買うけど食べるのは明日のおやつの時間だよ」と伝えました。すると息子は
「わかった!嬉しい我慢はできるから大丈夫!」と満面の笑みで答えたのです。
嬉しい我慢とは、我慢した先に良いことが約束されている場合の我慢のことですね。
私は息子に質問しました「じゃあ嬉しくない我慢ってどんなの?」すると、
「見たい動画をダメって言われたときかな」とのこと。
なるほど。これは我慢したところで嬉しいことがない場合、すなわち諦めの時。
息子のこの言葉から改めて”我慢”と”諦め”は別物だと痛感しました。
“我慢する力”の土台は「5秒待つこと」から
子どもが我慢する力を身につけられるようになるためのポイントは2つ。時期を見極めることと、5秒待つことから始めることでした。
2歳の子に「我慢しなさい」というのは、生後すぐの赤ちゃんに走れというのと同じくらい、無理な話だということです。また、5歳になったからといっていきなり30分静かに待てというのも違います。
子育ては難解です。褒めればいい、叱ればいい、と一言で語れるほど簡単ではありません。子どもによっても年齢によっても兄弟の構成によっても、一瞬一瞬の判断が違ってくるからです。しかも、答え合わせもできません。だからお父さんお母さんが子育てに悩むのも無理はないのです。
そんなときに子どもの発達段階や、個性に合わせた接し方を学ぶことで、一瞬一瞬の判断を基準を持つことができるようになります。
子どもの”我慢する力”は「ちょっと待ってね」と「待っててくれてありがとう。なぁに?」の繰り返しで身につきます。
作業中に子どもに話しかけられてイラっとしていたお父さん、お母さん、これからはチャンス♪と思って「5秒待ってね」に挑戦しましょう。そして5秒後に作業の手を止めて、子どもの目を見て「待てたね!」と声をかけることが、将来の我慢する力につながります。子どものキラッキラの笑顔も見れるおまけ付きです。