今回は非認知能力シリーズ3回目。【やる気】についてです。「やる気にさせる」方法ではなく「やる気を保つ」方法をお伝えします。
見たい!やりたい!触りたい!を叶えるとやる気まんまんの子に育つ
とある学習塾のC Mの影響で「やる気スイッチ」という言葉が一般的になりました。そのため、やる気を出すためには何かきっかけが必要だと考えている人が多いのかもしれません。
確かに大人が家事や資格の勉強に取り掛かるために重い腰を上げるには、やる気スイッチが欲しいものです。
しかし、発達心理学的に見ると、子どもにはやる気スイッチはありません。なぜならやる気は常にON状態だからです。
私たち母親は、子育てをしていて「だめ!」と言わない日はありません。「ちくわをストローにしたらだめ」「ラムネを鼻に入れちゃだめ!」「おじいちゃんの頭にスライムつけちゃだめ!」など、子育てをしていなかったら一生口にすることがなかったような言葉を毎日言わされています。
これは、子どもがすでにやる気に満ちているという証拠でもあります。
毎日繰り広げられるイタズラはやる気の証
大人から見ると「イタズラ」に見えるような奇想天外な子どもの行動は、実は全て「実験」です。
発達心理学では、1歳のころに特にやる気が育つと言われています。1歳といえば、どこにでもよじ登ったり、なんでもゴミ箱にポイしたり、離乳食を握りつぶして投げつけたりと、イタズラ三昧の頃です。
しかしそれは「これはなんだろう?」「押したらどうなるのかな?」と湧き上がってくる疑問の答えを見つけるべく、あらゆる実験をして、世の中のことを自ら学んでいるのです。
五感をフル活用して自ら脳を刺激し、学んでいるのだと思うだけで、少し気持ちが楽になりませんか?
この時期に思い切り実験を楽しめた子は、その後も意欲的に物事に取り組めるということがわかっています。つまり、やる気スイッチがONのままになるということですね。
持って生まれたやる気があれば5歳児でも自ら学ぶ
5歳の息子は赤ちゃんの頃からいつも一緒に寝ているヤギのぬいぐるみを「ヤギくん」と呼んでとても大事にしています。
先日、動物園に行ったときに、動物と触れ合えるコーナーがあり、そこには本物の子ヤギがいました。本物のヤギを初めて見た息子は、早速そばに寄っていきます。そして感触を確かめるようにヤギのあちこちにそっと触れていました。
その日の晩、いつものように「ヤギくん」とベッドに入った息子が話してくれたことに私はとても感激しました。
「おかあさん!ヤギのツノはかたいんだよ!」
息子は大発見をしていたのです。「ヤギくん」は全身が柔らかいけれど、本物のヤギはツノが硬い、ということをしっかり学んでいたのです。もしかしたら、柔らかいと思って触ったら想像よりも硬くて、より強く印象に残ったのかもしれません。
予想を立てる→検証する、という流れは、学習したり実験したりするのに必要な姿勢です。それを教わるでもなく、強要されるわけでもなく、5歳児が勝手にやっていることを見ても、人は元々学びたい、知りたい、やってみたいという意欲があることがわかります。
やる気を出させたい!と頑張るよりも、すでに持っているやる気の芽をいかに育てるか、が大切なのです。
やる気を出させる方法より、やる気をキープする習慣を
子どもがイタズラ(のように見えること)をしそうなとき、なんでも「だめ!」と止めてしまうのはもったいないです。
もちろん、危険なこと、不健康につながること、不道徳なことはしっかりと止める必要がありますが、その場合はただ「だめ!」と言うのではなく「熱いから触らないよ」「危ないよ」と明確に伝えるといいですね。
それ以外のことであれば「今だけ」と割り切って、この子は今何を学んでいるんだろう?と一緒に考えながら実験を見届けましょう。
握ったら形が変わった、押したら倒れた、など、予想通りの実験結果が出たときの子どもの嬉しそうな笑顔は特別かわいいものです。「できたね!」と一緒に実験の成功を祝いましょう。
「イタズラが成功したときの憎たらしい笑顔」と思っていた頃は、子育てが辛かったです。「実験に成功した笑顔」だと思うだけでイライラせずに見守れるようになるなんて、自分でも驚きです!